ぼくは笑わない

扉を開けたら閉めなくてはいけない様に、その行為の代償は知れたもんじゃない
来た道を戻るだけでよかったとしてもそれは簡単な事ではないでしょう
足し算に足し算を重ねて出来上がった塊は土の中に埋める事しか出来ない
隙間を縫う様に引き算した先に広がるのはどんな景色だろう
そう、これは想像に過ぎない
過程の話は机上の空論、そこに終着駅は設定されていない
線路は続くよ、どこまでも
明日になれば解る事だって、今はまだ解らないのだから
今のぼくは、明日の僕と分かち合えない
十歳のボクは誕生日プレゼントに何をもらったっけ
ぼくは覚えていない

対象はいつだって一人称で物語を語らなかった
だから何度も同じ話をするんだ
おかげでみんなの事を知る事が出来たよ
でも結局解らず仕舞い
"ぼく"だけの心が取り零された
それだけを掬えないまま、濁りゆく川の奥底まで沈んでいくのを眺めてた

眺めてた?
この景色を眺めているぼくは誰?