三ツ矢サイダー

小学校高学年の頃の話
信濃町のとある処で、一時帰国をする度に家族で泊まっていた場所があった
内装は日本の古い旅館みたいな処で少しボロい感じではあったが、約3年ほど日本で生活した以外の人生を海外で育ってきた自分にとっては「日本」を感じる事のできる、とても良い空間であった
ごはんも格安で、朝は確か納豆や海苔が置いてあるバイキング式だったような気がする
朝食に日本食を食べるのには慣れていなかったが、好きだった
時差ぼけの眠さの中で食べたあの食堂の空気感や料理の味を未だに鮮明に思い出せる
少し歩いたところにあるコインランドリーへ行った時に、ジャンプだかの漫画雑誌が置いてあったのがとても新鮮だった
泊まっていた部屋の入り口の隣に自動販売機があって、そこで買ってもらった350mL缶の三ツ矢サイダーが世界がひっくり返るほど美味しかった

当時ニューヨークに住んでいた自分は日本に対する憧れが強かった
だから日本に一時帰国していた、たったの一、二週間は何もかもが輝いていた
憧れの地に自分はいて、コンビニでゲーム雑誌を買ったり、ファーストフードレストランで料理を一人で注文したりしていた事
「ちょっとした事」と形容されてしまうような事すらも、自分にとってはとても貴重な時間で、貴重な体験だった

そんな事を、今日久しぶりに家族で晩飯を食べに行った時に、思い出していた

今でも三ツ矢サイダーを飲むと、当時のワクワクやキラキラしていた世界を思い出す
その空想の中でなら、心の底から笑っていられた



追記
ここ数日、とある動画配信サイトに登録し無料期間中に色々見ようと思って、ワンピースを見ている
そのエンディング曲が、自分が今更言うまでもないのだが、非常に素晴らしくて、上記した気持ちに何か近いものが感じられた
「Memories」大槻真希
http://www.kasi-time.com/item-15871.html

小学校二年生の三学期にシンガポールから日本の小学校に転校した
昼休み、みんなが班毎に机をくっつけ始めてるという当時の自分にとっては異様な光景を目の当たりにしながら、クラスメイトが「昨日のワンピース見た?」「見た見た!」という話をしていた
(ワンピース・・?あの、服のワンピース?男子も見たと言っているけど、女子向けのアニメじゃないのか?)と不思議に思っていたのを覚えている
翌週、ワンピースを見て、服の話じゃなくて海賊の話だと知る
それが確かサンジが仲間になる頃で、海上レストランバラティエにドン・クリークが攻め込んできていた頃だった

この曲を聞いていた当時は、気付けなかったな