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何気なく開いたアルバムの中に、楽しかった思い出が沢山、沢山残っていた
当時は絶望の中に居るのだと、錯覚していた
あんなにも幸せそうな表情をしていた事を、知らなかった
そこでは間違いなく柔らかな時間が流れていたという事には気付いていたのかな
ありがとう
色んな事が変わってしまった
そして自分自身が一番変わってしまったという事実が重くのしかかる

今思えば、当時はまだ希望があった
明確な「"ここ"を出た後」があった
しかし、色んな人の力を借りて辿り着いた"そこ"に希望はなかった
正しくは、希望は自分で探さなくてはいけないものだったんだ
なのにそれを放棄して、受動的に、ただ流されるままに、全てから逃げる様に時を過ごしてきて、遂にその清算をする時がきたようだ

アルバムを見返している間は、その場の匂いや、写っていない出来事すら思い出していた
まるで自分がその場にいるかの様な没入感に浸っていた
「あー、こんな事もあったね」
なんでもないと思っていた事に微笑む自分がいた
なんでもない事なんてなくて、それが全てだった

自分の笑い声でふと我に戻ると、涙が出そうな程の絶望に襲われた
時間は戻せない
過去には還れない
人生はやり直せない

二十歳まで生きないと思っていた自分は、その思いに反し圧倒的な幸せの中でその時を迎える
思えばそこが絶頂だったのかもしれない
もしかしたら、あの時に全てを終わらせておくべきだったのかもしれない
岬ちゃんの様に、それを手放し、乗り越える事で強くなれる、なんていう屈折した理論は通用しなかった
それから五年が経ち、何が変わって、何が変わらなくて、何が変わってしまった
楽しかった思い出の中だけで生きるなんて、都合の良い事は出来ないんだ
出来ないんだ


前までは、身を振り絞る様にしながらでもなんとか頑張れていたのに、気づけば心も体も言う事を聞いてくれない事が増えた
出来ない事が増えてしまった
それを甘えだと言ったけれど、本当にその通りだと思う
心を開かなくなってからは、そうやって叱ってくれる人がいなくなっていた

「ソラニン」も「3月9日」も、「ギブス」も「落日」も、やっぱりまだ聴けないでいる


最近は嫌な事があるとその前後の記憶が抜け落ちている事が増えてきていて、何をやっても悪い方向にいってしまうのではないか、という考えてしまう
悪循環から抜け出したい
変わりたい
けど、どこを目指して歩けばいいのだろう(自分で考えろ。大人なんだから。)
ぐにゃぐにゃな地面の上で、どうやって歩を進めていけばいいのだろう(自分で考えろ。大人なんだから。)
歳を重ねたくないこれ以上あの日々から離れていくのはもう耐えられない